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養壺③

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中国一の優れた茶葉を手に入れられる皇帝でも、優れた茶壺(急須)を手に入れるのは至難の技だった。
素晴らしい名壺を持っているという、ある貧しい男の噂を耳にした皇帝は、早速宮中に呼び寄せる。
「いくらでもお金を払うので、その茶壺を譲ってくれないか」とお願いするが、男はウンと言わない。
無類のお茶好きで、極上の茶葉を楽しんでいた彼は、今は身上潰しての一文無し。
ところが名壺に育った急須だけは大事に手放さずにいたので、茶葉は買えずとも、湯を注いでは、かつて飲んだ名茶の味香りを思い出す生活をしていた。
それならばと、皇帝は提案する。「毎日自分のお茶の時間に、その急須を持参して宮中に来てほしい。そなたの急須で、私の茶を、ともに味わおうではないか」と。
長い時間をかけて大切に養壺した急須のおかげで、極貧の男が、皇帝とともに、中国一の茶を味わうことができたとさ。

中国古陶磁陶枕斎 http://www.touchinsai.net






by touchinsai | 2018-02-09 14:23 | 茶壺