紙銭

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福建省は厦門の名刹、南普陀寺を訪れた時のこと。
山門途中の石のベンチの上に、愛らしい紙の束が置いてあるのを見つけた。
当時それが紙銭だと知らない私は、椅子の上に置き去りにされた印刷物、いいもの拾っちゃったとばかりに喜んでいただいて帰ろうとすると、後から血相を変えて追いかけてくる中国人女性がいた。
「×××××!」・・・つまり、「私の買った紙銭に何をする、ドロボー!」と怒鳴っていたのだ。

中国で死者のために焚く紙製の銭を、紙銭あるいは冥銭などと呼んでいる。
黄色い紙に銭の形を印刷したものや、金銀の紙を貼り付け鬼神を描いたもの、紙幣に模したものなど、様々な形や絵のものが、寺院内の売店に売られている。

無知と物好きが合わさると恐ろしいもので、この紙銭の多様で愛らしいデザインにすっかり魅せられてしまった私は、ちょっとした紙銭コレクターになってしまった。そしてある年、上海の骨董屋で、何と、この紙銭を印刷する木版ローラーに出会ってしまったのだ。
2㎏はあるだろうか。持ち帰るには重く、決して安くはないその買い物に、周囲の目はかなり冷たく。しかし私の心はレアな出会いが嬉しく、喜びで熱く満たされていた。

「これで私はいつでも紙銭造幣局を始められるよ」、などと不謹慎なことを言うつもりはないけれど、煙となって冥界に届くと信じられている紙銭、亡き人があの世でお金に困らないようにと言っては焚く紙銭。印刷されてから焚かれるまでの短い命のこの紙銭の、様々に愛らしいデザインの魅力は、亡き人を想い、偲ぶ、庶民の純粋な祈りのエネルギーの形なのかもしれない。


中国古陶磁陶枕斎 http://www.touchinsai.net
※2018年3月1日(木)からの新特集「マイフェイバリット」。陶枕斎の大好きな中国陶磁を、6月末までの4カ月間、特別展示いたします。




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# by touchinsai | 2018-04-20 18:46 | 感謝 | Comments(0)

茶筒

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紹興酒で知られる紹興は、水と緑の美しい街だ。
名前は忘れたが、大きな池のある、中庭の見事な寺で、美味しい昼食をいただいた。
スープや炒め物もさることながら、最後に登場した焼きそばに、悲鳴をあげた。
美味しいのだ。
日本で言えば、万能ねぎだろうか、香り高い細ねぎが、薄茶色い麺と炒められただけの、実にシンプルな焼きそば。
油の新鮮な耀きと甘みに、麺のうま味が合わさって、何とも美味しい焼きそばだった。
あまりの美味しさに、はしたなくもお代わりをして、また驚いた。
追加料金、当時(20年前)の日本円にして、たった35円のひと皿(約6人前)だった。

その寺の一角に、骨董を売る店があった。
骨董好きの私は、多分目の色を変えて、あれこれと物色。集合時間に遅刻したのも、忘れられない思い出だ。
そこで手に入れたのが、写真の茶筒。
この茶筒を見るたびに、あの、うまかった35円の焼きそばが、夢のように思い出される。


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# by touchinsai | 2018-04-19 17:31 | 茶壺 | Comments(0)

商品カタログ

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陶枕斎オープン1周年を記念して制作した、「陶枕斎商品カタログ'16」から早1年。
今度は「花釉磁」「磁州窯系」の2種の窯別に、A5サイズの可愛らしいカタログが誕生しました。
昨年暮れから撮影を始め、編集、印刷作業を経て、図らずも中国元宵節の昨日、めでたくの納品となりました。

「売れてそうもないのに、なぜカタログばかり?」の声が聞こえてきそうですが、それには深い?訳がありました。
実は陶枕斎オーナーの前職は医師。日ごろから彼は「芸術家はいいなー、音楽家はCDに、画家は絵に、作家は本にと、自分の作品が残るから」と、よく言っていました。医者は患者を治したら、ハイ、さようなら。カルテばかりが残る職業に、何ともいえないヤルセナサを感じていたようです。
そして今から3年前に早期退職、好きで集めた骨董で骨董屋を開くことになります。
骨董屋は、それこそ商品が売れてしまったら手元には何も残らない。ならばと、売れないうちに収蔵品の記録を残したい・・・。極めて自己満足的な理由から、カタログ制作が始まったわけです。

なので、掲載されている作品に対する愛情は人一倍、カタログにも「売りたくないオーラ」が出ているような気が致しますが、ご来店いただいた方には、もれなく差し上げますので、是非遊びにいらしてください。

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# by touchinsai | 2018-03-03 18:07 | 感謝 | Comments(0)

中国古陶磁の魅力

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2018年3月1日から、陶枕斎新特集「マイフェイバリット」(~6月末まで)が始まります。

タイトルの通り、陶枕斎が大好きな中国陶磁を、4カ月にわたって特別展示いたします。

これは本当に漢や唐、宋や元の、古い時代に焼かれたものなのか。
あるいは清代、乾隆帝が推し進めた政策のように、古き良き時代の作品をお手本にして作られたものなのか。
はたまた今から80年ほど前に、大量に製作されたと言われる模倣品の類なのか。
なかなかそれを正確に鑑定するのは、難しいことです。
しかし、いったいこれはどこの窯のものなのか。北なのか南なのか、あるいは西なのか。
その窯の胎土、形、技法、意匠における特長は何なのかを学んでいくと、そこには、長い歴史の中で、時の皇帝とともに、完成されては消えていった、壮大な中国の焼きもの史が見えてくるような気がいたします。
窯特有の美しさ、愛らしさ、冷たさ、温かさを、改めて感じてみることで、壊れゆくものに美しさを感じる日本人が、どこまでも完璧を求める中国陶磁の中に、美の共通点を見出す場になればと思います。

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# by touchinsai | 2018-03-01 15:49 | 感謝 | Comments(0)

梅と鶯

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寒い冬が終わりに近づいて、三寒四温、寒い中にも春の兆しが、そこここに感じられるこの季節。
花も鳥も人も、誰もが嬉しいその気持ちを、ぴったりと表現してくれているのが、この梅瓶です。
胎土に白化粧をし、その上に黒絵具をかけ、今度はその黒絵具を掻き落とすことで、絵を浮かび上がらせていく。
黄河をはさんでの河北省と河南省に分布する、磁州窯系諸窯の、主に北宋から南宋時代に多く見られた技法です。
「梅は咲いたか、桜はまだかいな?」
漆黒にくっきりと現れた鶯が、のんびりと春を唄っているようです。

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※2018年3月1日(木)からの新特集「マイフェイバリット」。陶枕斎の大好きな中国陶磁を、6月末までの4カ月間、特別展示いたします。









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# by touchinsai | 2018-02-24 18:12 | 磁州窯系 | Comments(0)