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鼻煙壺その2

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360度、見渡す限りの草原に到着すると、遊牧民の美しい民族衣装をつけた女性たちが、出迎えてくれた。
その中のひとりが、シルクの長い布の上に、銀杯を捧げ持っている。

突然、皆で歓迎の歌を歌ってくれる。
「アルヒンドー」(酒の歌)
晴れ晴れとした声法で、天に響き、地をわたるような歌声だ。

歌が終わると、銀杯が目の前に差し出された。
離れていても、プンと鼻をつくアルコール臭。度数の高い白酒が入っている。
民族衣装の女性は、ひとさし指をチョイと銀杯の中の酒につけ、天に向けて弾(はじ)いた。
「天に感謝」
またひとさし指で、今度は地に向けて弾く。
「地に感謝」
そしてもう一度、今度は私に向けて、酒を指で弾いた。
「あなたに感謝」
その後、銀杯が手渡され、このツヨーイ酒を一気に飲み干さなければならない。

バスを降りた途端、「空」と「草原」しかない球体の世界で、鮮やかな民族衣装を着た女性たちが、歓迎の歌を歌い、「天と地とあなたに感謝」と素晴らしい儀式をしてくれたのだから、勧められた酒は、飲み干さなければ、オンナ・ガ・スタル⁉

息を吐けば火がつきそうな白酒の洗礼を受けた後、気が付けば満天の星。
馬とともに生き、草原とともに移動して暮らす遊牧民族が、毎日見ているこの夜空の信じられない美しさよ。
ワイルドでシンプルで純潔な民族の、魂の魅力は尽きない。











# by touchinsai | 2020-06-06 13:57 | モンゴル

蒙古刀

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内蒙古自治区・呼和浩特市にある内蒙古博物館は、素晴らしかった。
3歳になると馬に乗り、6歳で競馬に出場するというモンゴル民族。
馬とともに生きてきたことを証明するかのように、博物館には、馬の鞍、鐙(あぶみ)、絆、鞭など、馬にまつわる装飾品が、展示品のほとんどを占めていた。
琺瑯や銀、銅など、どれも細かい細工が施され、刺繍やフェルトも、ひと針ひと針に、大事な馬への愛が溢れている。
それはそれは美しくて、見ている人を幸せにしてくれた。

写真の品は、ある方からいただいた、蒙古刀。
箸と小刀がひとつの鞘に収納され、男性がいつも腰のベルトにぶら下げる、遊牧民にはなくてはならない日用品だ。
普段使いの道具が、美しい宝石と銀細工で飾られている。

草原を家畜とともに移動するモンゴル民族に、余計な持ち物は、ない。
馬も道具も、今この時を生きるのに、なくてはならない存在ばかりなのだ。
大切に思う気持ちを装飾に表現し、日々大事に使うことで、道具にイノチが吹き込まれ、純潔な民族の心のように、キラキラと輝いている。






# by touchinsai | 2020-06-06 13:51 | モンゴル

汝窯の見どころ

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未だ多くの謎に包まれる汝窯だが、決まりごとはいくつかあるようだ。

①高台も含めて総釉である。
➁支釘と呼ばれる支焼具を置いて焼造された。
③目跡は一般に3~5個。

先を尖らせた支釘のため、目跡は極めて小さく、古くから「芝麻花」(ゴマ粒)と呼ばれ、これが汝窯の見どころとされたそうだ。




※写真は陶枕斎所蔵の汝窯型青磁
※参考文献「中国名窯名瓷シリーズ3~鈞窯瓷~」(二玄社刊)

中国古陶磁陶枕斎 http://www.touchinsai.net
※2018年7月からの新特集「汝窯型青磁」を、9月末までの特別展示いたします。
※8月1カ月間夏休みとなります。

# by touchinsai | 2018-07-21 17:58 | 汝窯

汝窯の魅力


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汝官窯瓷の美しさの最大の理由に、「釉内に瑪瑙あり」ということがある。

1987年、河南省宝豊県清涼寺で発見された汝磁窯は、窯場総面積25万㎡という大きなものだった。
しかも、調査の結果、窯跡付近に埋蔵量の豊かな瑪瑙鉱が発見された。
そこには古代に掘られた坑道も残っていたらしい。
赤、黄、青、白、緑。
様々な色の鉱石が坑道に散乱している様を発見した瞬間は、どんなにか素晴らしい瞬間だったろうか。
「いよいよ謎に包まれた汝官窯の発見か!」
調査に関わった方々の興奮が、今に伝わってくるようだ。


中国古陶磁陶枕斎 http://www.touchinsai.net
※2018年7月からの新特集「汝窯型青磁」を、9月末までの特別展示いたします。
※8月1カ月間夏休みとなります。




# by touchinsai | 2018-07-13 18:06 | 汝窯

汝窯の謎


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「汝窯は、官、鈞、哥、定の各窯と並んで知られた中国古代名窯の一つである。
汝官窯というがその場所はいったいどこにあったのか。
古代窯は地名から名付けられるから、汝窯は汝州とすべきというが、昔から諸説いろいろあった。
この五十年ほどの間に、汝州市(もとの臨汝県)および河南西南地区では何度も考古学調査がおこなわれ、
青磁を焼いた古代窯跡が百か所ちかくも発見された。
その製品は宮廷御用汝窯磁とかなり似ているが、明らかに一般用汝窯というものもあった」。
(「汝窯の新発見」紫禁城出版社刊より抜粋)

この「汝窯の新発見」が刊行されたのは、1990年。
「宮廷御用汝窯はいったいどこにあるのか?」の謎に答えが出たかと思われた、河南省大豊県清涼寺の窯跡が発見された3年後のことだった。
しかし、それから28年たった今、「汝窯の宮廷窯はどこなのか?」未だ謎に包まれたままなのだ。


中国古陶磁陶枕斎 http://www.touchinsai.net
※2018年7月からの新特集「汝窯型青磁」を、9月末までの特別展示いたします。
※8月は1カ月間、夏休みとなります。

# by touchinsai | 2018-07-08 15:06 | 汝窯