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茶壺「古竹矮」

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最高級ウーロン茶・岩茶の故郷である福建省武夷山は、1999年、世界遺産に登録された。
世界遺産も今や珍しくはないが、自然と文化の複合遺産は、そう多くはない。
「碧水丹山」と形容される、風光明媚な峡渓谷が広がり、様々な珍しい動植物が生息している。
穏やかで豊かな自然の中に、遺跡や道教寺院、宋代の茶園など、文化の跡も残されている。

風景保護区内のハイキングコースを歩いていると、美しい竹を多く見かける。
古来、竹と茶は相性がいいとも言われるが、四角い竹など、珍しい種類もあった。

武夷山の若き骨董屋で初めて天目茶碗を買った翌年、2番目に手に入れた品は、竹を象った古い茶壺だった。
高さがないのに胴体が大きいので、実際に茶を淹れてみると、重くて持ちにくいし、淹れにくい。
しかし、恐らくは手慣れた職人による、竹の節のゴツイ表現、笹の葉の洒落たデザインが、時を経た朱泥の色合いとマッチして、実にいい味、ひと目惚れだった。

底には「古竹矮」と銘打ってあるものの、聞いたことのない作者名。
ひょっとするとこれは、「背丈の低い古い竹」と命名された急須なのではないだろうか。
だとすると、何て粋な製作者なのだろう。
自分の名を刻むより、出来上がった作品への愛とクリエイティビティを刻印したのだ。
実用には向かない急須だけれど、名も知らぬ陶工の、アートな魂が感じられる、大事な大事な急須となった。




中国古陶磁陶枕斎 http://www.touchinsai.net
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by touchinsai | 2018-04-27 14:49 | 茶壺